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透明惑星危機一髪

ストーリー

COVER
ハヤカワ版表紙

 太陽系の最果て冥王星の衛星ケルベルスといえば、泣く子もだまる凶悪犯専用の監獄です。 脱獄不可能のこの監獄からある男が何人かの子分を引き連れて消えてしまいました。 いったいどうやって脱獄したのか、それすらもわかりません。 彼こそが、〈火星の魔術師〉――恐ろしく残忍な性格に卓越した科学知識をあわせもつ最悪の男、ウル・クォルンなのです。
 それから時を経ずして不思議な盗難事件が相次ぎます。 冥王星では新型のサイクロトロンが、海王星からは高価な合金が、そして土星からは原子力工作機械が次々と盗まれたのです。 しかもそいつ等は、事件を察知していち早く包囲した惑星警察の網の目をあざ笑う様に消え去ってしまったのです。 ――奴の仕業に違いありません。
 こんな恐ろしい敵に立ち向かえるのは彼等しかいません。
 主席から事件の解決を依頼されたフューチャーメンは残された手がかりから、クォルンの目的の一端をつかみました。 奴は異次元への転移装置を手に入れたのです。 これで消えてしまう宇宙船の謎も説明がつきます。
 しかし、新たな謎が生まれました。 異次元で奴はなにをたくらんでいるのでしょうか...

解説

 ハヤカワSF文庫で最初に刊行されたのがこの話です。 が、第7話であり、また、内容も前の話に関連する事項などがいくつかありますから、やはり7番目に読んだ方がいい話です。
 話は『太陽系7つの秘宝』につづいて、宿敵〈ウル・クォルン〉との戦いです。 今回の舞台は我々の宇宙とは別の次元の並列宇宙です。

主なエピソードなど

〈赤い魚雷〉(レッド・トーピード)
 フューチャーメンはいつも月のチコに居るとは限りません。 時には月を遠くはなれて探検に出ていることも。 そんなときに彼等を呼び出すのに使うのが、〈赤い魚雷〉です。 一種のホーミングミサイルで、発射されるとコメットをどこまでも追跡し、その回りをグルグルと回って急を知らせる仕組みです。
 しかし、この装置、敵の手に渡ったらマズいんじゃないでしょうか。

カーティスのいたずら
 調査のために大学に向かったカーティス、教授に話を聞こうとしましたが、その若い風貌ゆえか、学生と間違えられて相手にしてくれません。 そこでカーティスは授業をかき回してやろうと思います。 教授が熱力学の第2法則について語り終わったその時、カーティスは立ち上がっていいました。 「失礼ですが先生、それはちょっと間違っています」 さあ、結末はどうなることか。

次元転移装置
 我々の宇宙の4つの次元、すなわち縦、横、高さ、そして時間を共有して、さらにもう一つの次元=5次元でのみ切り離されている宇宙があるといいます。 これが並列宇宙です。 この最後の次元をまたいで移動する装置が次元移転装置です。 科学者スカル・カーはその装置の製作に没頭していましたが、ある日謎の死を遂げたのです。

ジョニー・カーク
 なんとコメットに密航してきた14歳の男の子です。 フューチャーメンにあこがれなんとか仲間になろうとしますが... アニメ版のケン・スコットにあたるキャラクタですね。

オットーの仕返し
 『謎の宇宙船強奪団』でグラッグにまんまと一杯くってしまったオットーの反撃です。 相手がゴム人形を作ってきたとなれば、こちらの作る物は決まってますね。 これがなかなか手の込んだデキで、グラッグもかなりギョっとすること間違いなしです。

ラダイト
 青色の光を放つ放射性物質で、太陽系では天王星でのみ産出されます。 サイクロトロンの燃料としてはもっとも強力とされています。

つぶやきの谷
 天王星にある峡谷で、太陽系7不思議の一つとされています。 この付近の岩盤に含まれる特殊な結晶体は、あたりの音波を記録してしまします。 風が吹くたびにその音は再生され、谷は太古からの「つぶやき」で満たされるというわけです。

暗闇族
 天王星の洞窟深くに住む原住民族です。 大昔に地上から洞窟へその住処を移したとされ、古代天王星語で話します。 暗闇に適応した大きな瞳で、洞窟のなかのわずかな光のもとでも、なに不自由することなく暮らしています。

オットーの飲む酒は
 天王星に宇宙六分儀を買いに行ったオットー。 ちょっと酒場に道草、そこで一番強い酒を軽々と飲み干してあたりを煙に巻きます。 彼は代謝機能がズバ抜けているのです。 彼は酔っぱらうことなどないのでしょうか...いや、そうでもない様です。 次に彼が飲んだものは…