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謎の宇宙船強奪団

ストーリー

COVER
ハヤカワ版表紙

 「自殺基地」――優秀なテストパイロットが最新の宇宙船のテストを行うこの基地で、さいきん不思議な事件が頻発しています。 宇宙船が突然消え去る! しかも、宇宙を飛んでいる真っ最中に、パイロットだけを虚空に残して宇宙船だけが突然無くなってしまうというのです。 そして今日もまた一隻――これで19機の最新型の宇宙船が消えてしまいましったのです。 ただならぬ事件に、太陽系政府主席はフューチャーメンの出動を要請しました。
 ところが月面のフューチャーメンの基地でも事件は起きてしまいました。 退屈しのぎにコメットを乗り回していたオットーを乗せたまま、あろうことかコメット号までが奪われてしまったのです。 残された3人には宇宙船もなく、月から出ることすらかないません。 さらに何という悪知恵! 敵は月の周回軌道に通信妨害装置を置いて行ったため、地球と通信することもできないのです。
 コメットを奪還することはできるのでしょうか。 フューチャーメンすら出し抜く宇宙船強奪団との戦いは、栄光ある宇宙船の祭典、「太陽系一周レース」をも巻き込んでゆくのです!

解説

 ついに自由に動ける様になるサイモン教授、前作でオットーのペットになったオーグの活躍、サルガッソーのエピソードの決着などシリーズ前半の集大成的な作品です。 シリーズの大きな楽しみの一つである、グラッグとオットーの愉快なやりとりは、いよいよさえ渡り、大笑いは必至の数々のシーンが繰り広げられます。 この作品をもって、ついにCFのスタイルが確立したといえるでしょう。
 また、「自殺基地」の面々をはじめとする登場人物の生き生きとした描写も見逃せない作品になっています。

主なエピソードなど

自立するサイモン
 「生きた脳」という特徴あるキャラクタのサイモン教授ですが、自分の意志では動くことができないという欠点がありました。 この欠点で何度か危機を味わっているからか、この作品でついに行動の自由を獲得します。 ケースの各面から「推進ビーム」を放射できる様になり、これを使って自由に空や宇宙を飛ぶことが出来るようになったのです。 (なんとなく「ジェイムスン教授」を思いおこしますね。) これで彼はフューチャーメン中最高の機動力を手に入れ、チームの戦力は格段にアップしました。

"なかよし"装置
 数あるカーティスの発明品のなかでも極めつけの変な一品。 レコードに思考波を記憶し、それを放射することで、脳の神経電流を遠隔操作し、相手を催眠暗示にかける装置です。 こういうと、なにやら洗脳装置の様に聞こえますが、この機械の目的は「仲のいいグラッグとオットーを見てみたい」ということなのですから。 装置はうまく働いて、二人は互いに肩をとりあい過去の喧嘩を反省するのですが、それを見て笑いころげたカーティスが誤って装置を落としてしまい、もとの黙阿弥。
 しかし、こんな装置をもくもくと作るカーティスとサイモンの作業風景の方が、私には遙かに笑えると思います。

グラッグの先制パンチ
 "なかよし"装置の後遺症でしょうか、グラッグがなにやらオットーにプレゼントを作っています。 さすがのオットーもこれには感謝して、その作業を手伝うのですが... それはグラッグ流の手の込んだ意地悪だったのです。
 これを根に持ったオットーは密かに復讐の機会を待っていた様です。

サルガッソふたたび
 この作品でカーティスは2度目のサルガッソに足を踏み入れてしまいます。 前回使った脱出方法はもう使えません。 そこで「暗黒星大接近!」に登場したあれを使うのです...

時間加速機
 自分の電子のスピードだけを加速することによって、自分の時間を他の時間より早く進めるというとんでもない発明品です。 サイボーグ009の加速装置みたいなものですね。 しかしこの装置は宇宙船に取り付けることもできる様で、そうするとその宇宙船はとんでもないスピードで動くことが出来てしまうのです。 この装置が広く使われてしまうといったいどんなことが起きてしまうやら。 しかしご安心を。 そんなことはカーティスもお見通しです。 『透明惑星危機一髪』で語られたところによれば、犯人は記憶抹消装置にかけられ、この装置のことをすっかり忘れさせられたとのことです。