成田悠輔×斎藤幸平対談が面白かった (2)

「イースタリン・パラドックス」を知らなかったので、軽く調べてみたところ、勝手にまとめるとこんな感じか。
1)国、地域の中では、所得と幸福度は正の相関がある
2)国と国の比較ではこの相関は弱くなる
3)同じ国のなかで、時代の変化による所得の変化は幸福度とは相関しない
4)所得が十分にあがると幸福度は上がらなくなる

なるほど斎藤教授がよく主張している内容がまとめられている。1は成長論なので除外。2はやや関連がある。一時期流行った「ブータンが幸せの国」とか「GNH(国民総幸福)」とかいうものだろう。つまりGNPが少ないブータンの幸福度が高いということ。だけど、これも最近は疑問が出始めている部分で、実は統計が正しくないのでは?とか、そもそも全員が(先進国の基準では)不幸なので、不幸と感じていないだけなのでは?ということも言われている。これは2)の表裏で「本人が幸福と考えていれば幸福」という井の中の蛙をどう評価するかといえる。共産主義者というか平等主義の人は幸福は絶対値でなくて相対値だと考える傾向が強い。なので彼らは異質のものを極端に嫌う。(LGBTは?と思う人もいるだろうが、あれは保守を攻撃するための道具としてLGBTを使うことに決めたあとに「LGBTを嫌う奴は異質」と定義しているだけだ。)
3)は「『3丁目の夕日』は良かった理論」で、4)はまさに脱成長論だ。
もしかしたら、これで、斎藤教授の『人新世の「資本論」』は読まなくてもいいかな…(ダメだろ)

なので、
斎藤「もっと平等とかの別のフレームワークを試してみたらどうかな、というのが脱成長論」
ということだけど、まとめると、「資本主義は十分に発展したので生活をシンプルにして平等な社会を」…そのままマルクス主義の定義を聞いている気がしてきた。

というわけで「資本主義はその形態としての階級対立により内部崩壊して社会主義に収斂する」というマルクス主義を念頭にこのあとの斎藤教授の話を聞くと、けっこう普通というか、そのままなので、言葉選びに迷いが生じているさまが面白い。

成田「そんなに穏健な話(是正していこう)でいいんですか?資本主義をぶっ壊せとかは?」
斎藤「スローガンとしてはいいんだけど….だからほら私は…マルクス」
このあたりは、(それ言っちゃ、ただのマルクス主義になっちゃうじゃん)というのが透けてるようで辛い。新しい味付けとしての「環境」をもっとぶちこんで来るかとおもいきや、まだ出さない。

斎藤「格差を是正していこうとか、長時間労働とかを…」
すごく小さい話になってきちゃったぞ。というか、それ、現状のシステムの微調整になっているぞ…
斎藤「…その先に、ある種の目指すものとしてコミュニズムを置いておかないと、そこで(資本主義のまま)満足してしまう。ある種の理念、ユートピア。」
…なんとも辛そうな話しかた。「資本主義のチューンでもいいけど、それじゃユートピア(共産主義)にはならない」という単に好き嫌いの内容になっちゃった。

当然そこをついてくる成田さん。いつもの意地悪さはなくて、けっこう優しく遠回しに

成田「今のシステムが最善でないのは当然としてもそれを修正すればいいわけで、ぶっ壊して別の方法をとるのは成功率低いし、そもそも無理じゃない?そもそも君たちすらやる気ないでしょ?

優しいなあと思うのは、これ、古いマルクス主義の「新味」である「環境」を引き出すスルーパスになってる。このパスにちゃんと反応する斎藤さん。きたこれ、って感じ。QBKにはならない。

あたらめて考えると、マルクス主義を「環境」とかいう「ハバネロわさび味」でごまかすことなく「塩味」のままきちんと勧めるのが宮台さんのような気がしてきた。宮台さんは最初っから「どうせ何したって馬鹿は変わらない。崩壊するまで僕らは自分を保って待つだけ。壊れるのが早いほどありがたい」という「加速主義」を公言している。共感するかは別として、自分は宮台さんの方がはるかに誠実で好きだ。

(つづく)

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