成田悠輔×斎藤幸平対談が面白かった (終)

前回のつづき)
資本主義のマイナーチェンジで済む問題だしというスルーパスを受けて、すばやく「人新世」の味付けを語り始める斎藤さん。「地球がもたん時が来たのだ(シャア・アズナブル)」
だけど小惑星落として人類を減らすなら合理性はあるが、プライベートジェット禁止したところで斎藤さんの言うような50年先のカタストロフを止める効果はないのは明らか。(もし本当に「富豪=フランス1国のCO2」を信じているなら本当に東大教授か?と思う)真剣にそれを止めるなら今すぐ中国とアメリカ、それに続くインドあたりを潰すくらいしないとダメ。中国にも文句をいうグレタさんになる必要がある。そういう話は絶対にでない時点で、CO2削減は目的でなくて、マルクス主義を導き出すための方便なのは明確だ。

成田さん当然「そんなの解決にならない。もっと過激にやらなければ」という。貨幣のない社会を作れうと

実は自分は資本主義がなんなのかを一番楽に定義づけしようと考えたことがあって、現時点での答えは「すべてを貨幣で測る」だ。複雑な社会でなにかを判断する時には1次元の物差しが必要で、世の中の全てのものを無理やりにでも「貨幣」に換算して考える、これが資本主義と定義した。成田さんは過去の行動=貨幣と例示しているが、それも一つだか、それ以外の全てを貨幣にしたものが資本主義だ。

成田さんは、多くの人は本来は単なるスケールであるはずの貨幣自体に価値を見出してしまうようになって、今の問題はそれが原因ではないかと。これは全く同感だ。

その解決案として「貨幣=過去の行動を測るもの」の代わりに過去の行動自体をデータ化したものを使えないかという。これは斎藤さんも指摘している、芝麻信用(セサミ・クレジット)ほぼそのものと言える。これについては斎藤さんはGAFA(※1)のような資本家が信用スコアを作ってしまえば貨幣発行権を渡すようなもので、より状況(ここではCO2ではなくて格差)は悪化するという。だから信用スコアはいいが、それをコミュニズムで作らなければ意味がない。「データコミュニズム」。すばらしい我田引水。その文脈なら「民主主義」でも同じはずなのに。
これを受けて成田さんは「正当性のDX化はできないか」つまり貨幣の代わりに「正当な評価」をAIなどで数値化できないか?という投げかけをするところでこの動画は終わっている。

このAIと民主的な(コミュニズム的な、でもいい)信用スコアがどういう結果になるかを考えてみると、おそらく企業が独占しても、データによって裏付けされた民意でも、結果は同じ。なぜなら誰かが独占して行うにしろ、それが受け入れられるためには多数が納得することが必要であるから、つまり結果的には民意に裏付けされている。付け加えれば、民意は独占的企業によっていくらでも変えられる。2つの結果は同じことだ。

逆に、もし民意が柔軟に変化しその変化が評価に反映する考えると、イコール、信用スコアがものすごく柔軟に変化することになってしまう。符号が逆転するようなことだって起きるかもしれない。そもそも成田さんのいう「過去の蓄積」というのは過去に決定した成果が普遍であることが前提になっているはずだ。これが覆されれ、たとえば過去の行動すべてを現在の評価で再集計するようなシステムにすると、遡及法のようなもので、それこそ悪夢だ。

ただ、その悪夢が実現化してしまうというのが岡田斗司夫の「ホワイト革命」の警告で、未来の蓄積再評価の危険に備えて、基本的に平均値を出し続けろというアドバイス。斎藤さん、成田さんのような「こうすべき」ではなく「どうせこうなっちゃうから」という。これも前回最後の宮台さんと同じスタンスで、やっぱり自分はこっちの方が好き。

※1 GAFAはこの仕組みを表立っては使っていないからBATHというべきだ。こういう細かいところで意図的に中国を避けるところが斎藤さんを信用できない原因だ

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